レポート「建築探偵団 其の五『 地形図から読み解く円通寺西側の集落 』」

レポート「建築探偵団 其の五『 地形図から読み解く円通寺西側の集落 』」

日 時2021年10月10日(日)12:00~16:00
開催地倉敷市玉島久々井地区、IDEA R LAB(倉敷市玉島中央町)
講 師真野洋介(東京工業大学環境・社会理工学院 准教授)、石田尚昭(公益財団法人 岡山文化芸術創造 理事)
概 要https://o-bunren.jp/labo34/

早くも第5回を迎えた人気シリーズの「建築探偵団」。今回は建物や地域文化に興味のある10数名の参加者が、集合場所の「IDEA R LAB」に集まりました。晴天に恵まれたこの日は、ちょうど年に一度の「羽黒神社秋季例大祭」という地元の祭りが行われており、通りではきらびやかな神輿「千歳楽」の姿も見られました。

まずは参加者全員に江戸時代と近代・現代の玉島の地形図の資料を配り、講師の真野さんと石田さんが地形図をもとに玉島の歴史や街歩きの見どころを解説。かつては海に点在する小さな島々だった玉島は、江戸時代の新田開発とともに干拓が進められて集落が形成されました。時代ごとの地形図を見ると、港町として栄えた玉島の変遷が分かります。

この日のランチは地元の中華料理店の特製弁当。和気あいあいとおいしい食事を楽しみ、いざ3時間弱のフィールドワークに出発。歩いて里見川の西岸に向かい、商家と土蔵が建ち並ぶ仲買町通りを歩きました。通りにはなまこ壁の屋敷や造り酒屋、元銀行のレトロモダンな建築など、昔の問屋街の面影を色濃く残す建物が残ります。あちこちに伝統建築の意匠を見ることができ、その特徴や魅力について、石田さんと真野さんが丁寧に解説してくださいました。

仲買町通りから山際の旧街道へ抜け、集落に残る数々の史跡を見ながら今回の目的地のひとつである大屋敷・香西邸を目指します。香西邸では連島の廻船問屋を移築した母屋と、学校建築を移築した納屋の内部を見学しました。黒漆喰で仕上げた外観は、凸状にカーブしたむくり屋根や虫籠窓、室内では凝ったデザインの欄間や格子戸などの建具を鑑賞。倉庫や納屋には昔ながらの生活道具や農機具が残されていました。豪商の家らしい広さと凝った造りに、参加者も目を輝かせていました。

帰り道は少しルートを変えて荒(こう)神社に寄り道。高台になった境内からは円通寺北西部の地区が一望でき、参加者は地図と風景を照らし合わせながら玉島の歴史に思いを馳せました。再び仲買町通りに戻り、玉島商店街から裏通りを抜けて「IDEA R LAB」に到着。最後は収穫の多かった街歩きと建物鑑賞を振り返りました。

参加者からは「身近な土地についての新たな視点を得られた」、「解説を聞きながらの街歩きで、時間の旅をさせていただいた気分。地域全体の宝としてつなげていきたい」といった感想が寄せられました。

地形図の説明をする講師の石田さん

昼食は玉島の町中華「廣珍」の特製弁当

問屋街の面影が残る町並みを散策

商家や蔵の建ち並ぶ仲買町通り

講師の真野さんが玉島の歴史と地形を解説

香西邸の母屋を見学

欄間や格子戸など、凝った建具が残る

たくさんの古道具が残る香西邸の納屋

※今回は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策をした上で開催いたしました。

 

文化芸術交流実験室 

テキスト:溝口仁美