レポート「町工場を音楽レーベル化する INDUSTRIAL JP」

レポート「町工場を音楽レーベル化する INDUSTRIAL JP」

日 時2021年11月14日(日)11:00〜16:00
開催地蔭凉寺(岡山市北区中央町10-28)
講 師下浜臨太郎(アートディレクター、グラフィックデザイナー)、篠原真祐(「蔭凉寺」僧侶、写真家、音響エンジニア)
概 要https://o-bunren.jp/labo35/

今回の会場は、岡山市内の繁華街に位置する蔭凉寺。本堂にはスクリーンと音響がセッティングされ、「INDUSTRIAL JP」の作品をじっくり視聴できるライブ空間が準備されました。参加者は輪になって座り、普段以上に距離感の近い実験室となりました。

まずは講師の下浜さんが観察とサンプリングの表現事例として2つのプロジェクトを取り上げました。INDUSTRIAL JPは、町工場の音と映像でオリジナル楽曲を作る音楽レーベルです。下浜さんはリリースした作品を上映しながら、活動のきっかけから楽曲制作の裏側までを紹介。どの作品も完成度が高く、ばねやネジといった機械加工の音と動きがリズミカルに合わさり、クラブミュージック的な心地よいグルーヴ感を生み出します。工場の魅力が伝わる作品と解説に、参加者も大きな関心を寄せていました。

次に町の古い看板文字をフォント化する「のらもじ発見プロジェクト」に話題を移し、のらもじに込められたアナログなデザインの魅力を紹介。下浜さんは、のらもじ提供者となる商店主への取材秘話をふまえ、今までに発見したのらもじのパーツやフォルム、質感の特徴を例に挙げて分析しました。

続いて、のらもじ発見のプロセスを体験するため、岡山市北区にある千日前商店街と表町商店街を散策。参加者は、喫茶店や洋品店に掲げられた看板文字を見つけて「これは、のらもじですか?」と下浜さんに報告。写真に収め、その書体にどんな特徴があるのかを話し合いました。独特の丸い形や角の付け方などに気づくと、不思議と街の書体に愛着がわいてきます。のらもじを通して、見慣れた商店街の景色の中に新たな面白さを発見できました。

蔭凉寺に戻り、音についてトークを広げました。身近な音やその効果を取り上げ、音を素材として販売するデジタルアーカイブを紹介。人の聴覚や視覚を刺激する「ASMR」や個人的なフェチ音をテーマに音の世界を深堀りします。最後に篠原さんが音響の魅力を解説し、レコードとCDの音の響き方の違いを聞き比べ。人の手が作る揺らぎやアナログの魅力とデジタルの融合について、いろいろな角度から再発見する会となりました。

篠原さんは「アナログとデジタルの関係性として、音もビジュアルも同じ要素がある。のらもじは街の見え方が変わって面白い」と振り返りました。参加者からは、「面白い取り組みが工場や地域を盛り上げることにつながって素晴らしい」といった感想がありました。

大画面でINDUSTRIAL JPの作品を上映

INDUSTRIAL JPの作品解説を行う下浜さん

音響について語る蔭凉寺の住職、篠原さん

工場の音と映像でミュージックビデオを作成

制作の裏話や現場のエピソードも紹介

街で見つけた「のらもじ」を分析

「のらもじ」を探しに商店街を散策

本格的なPAを前に音響解説をする篠原住職

※今回は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策をした上で開催いたしました。

文化芸術交流実験室 

テキスト:溝口仁美