レポート「これからの美術館が目指す学びの姿」

レポート「これからの美術館が目指す学びの姿」

日 時2022年9月23日(金・祝)11:00〜15:00
開催地黒住教宝物館「まることセンター」(岡山市北区尾上神道山)
講 師一條彰子(独立行政法人 国立美術館 学芸担当課長)、柳沢秀行(公益財団法人 大原美術館 学芸統括)
概 要https://o-bunren.jp/labo38/

会場は、黒住教の本部となる神道山に建てられた「黒住教宝物館」。ここは教祖の真筆や献納された美術品の数々が陳列され、信仰に限らず作品鑑賞ができる文化財施設です。今回は美術館に関心を持つ十数名の参加者が集まりました。

まずは黒住教本部の黒住宗芳さんの案内で、丘陵地に広がる約10万坪の境内を散策。山林に囲まれた参道を歩きながら、「大教殿」や朝日を拝むための「日拝所」などを見学しました。

昼食後は講師陣による講義がスタート。まずは、柳沢さんから大原美術館の活発な教育活動について紹介がありました。同館では地域や学校、企業、作家と連携した多彩なプログラムに力を入れています。柳沢さんは、館内外のスタッフで運営する夏の体験学習「チルドレンズ・アート・ミュージアム」や、学校の先生が美術館で授業を行う「学校まるごと美術館」、「未就学児童対象プログラム」、ビジネスや病院向けの美術学習といった幅広い事例について解説。さまざまな環境や立場の人が自ら作品にアクセスでき、美術館がハブとなって社会と結びつく取り組みについて、参加者も興味深く耳を傾けました。

次に、一條さんが2023年3月発足予定の「国立アートリサーチセンター(仮称)」の目指す学びの姿について紹介しました。まずは作品活用促進、情報資料、社会連携促進といった各グループの活動や目的を説明。一條さんが担うラーニンググループでは、他部門や国内外の美術館と連携した教育普及活動を進めています。今回は鑑賞授業に使うデジタル素材の提供や、芸術・福祉・テクノロジーを融合した共生社会に向けての共同研究、認知症対応プログラム、自閉症の特性に配慮した来館案内「ソーシャルストーリー」、異文化交流のプログラムなどを詳しく解説し、担い手の育成も含めた展望を話しました。

後半はおかやま文化芸術アソシエイツのプログラムコーディネーターである大月さんを交えたディスカッションに移り、美術館の変革やアクセスしやすい場づくりについて話題を広げました。質疑応答ではソーシャルストーリーやビジネス向け研修についての質問が挙がり、美術館が目指すべき課題や可能性について闊達な意見交換を行うことができました。

参加者からは、「国立美術館が開こうとしている印象を受けた」、「進めているラーニングプログラムを少しでも早く実現してほしい」といった感想がありました。

午前中は境内を回り大教殿などを見学

「黒住教宝物館」の展示物を鑑賞

今回の講師を務める一條さん

大原美術館の学芸統括を務める柳沢さん

ラーニングプログラムの事例紹介

黒住教公室長の黒住宗芳さん

大月さんを交えたトークディスカッション

※今回は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策をした上で開催いたしました。

文化芸術交流実験室 

テキスト:溝口仁美