トークセッションとワークショップがセットとなった新しい切り口のシリーズ企画

レポート「伝統芸能から見る未来」

レポート「伝統芸能から見る未来」

 

日 時2018年2月17日(土)11:00〜16:00 
開催地旧中国銀行倉敷本町出張所(岡山県倉敷市本町3-1)
講 師大澤寅雄(NPO法人アートNPOリンク 理事)、小岩秀太郎(公益社団法人全日本郷土芸能協会 理事・事務局次長)、高橋亜弓(仔鹿ネット)
概 要http://o-bunren.jp/post-127/

おかやま文化芸術アソシエイツの一環として11月にスタートを切った文化芸術交流実験室。それぞれ独自の立場で伝統芸能に関わる3人を講師に迎えて開催した4回目の様子をレポートでお届けします。
倉敷市美観地区の中心地にある旧中国銀行倉敷本町出張所を会場とした今回。備前市や高梁市の地域おこし協力隊員や行政職員、文化財団職員など、地域で文化事業に携わる方が中心に集まりました。

午前中は、郷土芸能(民族芸能)にまつわる課題意識が共有され、白熱した議論が交わされました。まず、存続の難しさについて、小岩さんから「少子高齢化や過疎による担い手不足が要因として挙げられるが、実際には仕事や介護などで練習や本番参加の都合がつけられず、行事をやめざるを得ない。また、下の世代に行事の意義や想いが伝わっていないのではないか。」という地域の実情をふまえた指摘がありました。

続いて大澤さんから、2017年6月に行われた文化芸術基本法の改正や、文化芸術推進基本計画の策定に向けた中間報告について共有があり、文化財を観光や福祉・教育分野などに戦略的に活用する方向性が提示されていることが紹介されました。その中で、「COOL JAPAN」や「OMOTENASHI」も話題になりました。日頃から外国人観光客と多く接し、文化交流イベントも企画している高橋さんから率直な指摘がありました。「海外の人の反応は、『 ”COOL JAPAN”は自然と滲み出るものであって自分から言うものではない』と冷ややか。今東京で人気があるのは、庶民の日常の暮らしや食べ物、地域のお祭りなどのローカルなコトで、日本人が海外の人に受けると思って行っていることはずれている可能性がある」。また、今後増えることが予想される海外との文化交流事業に際して小岩さんは1970年の万国博覧会を例に出し、「パフォーマンスとして紹介されては本質が伝わらない。郷土芸能の担い手自身が自分たちで何をどう海外の人に伝えたいのかを考え、それが実現できるよう交渉する必要がある。」との課題意識を提示しました。

午後からはワークショップを2本。まず、小岩さんによる、岩手県の郷土芸能である鹿踊り(シシオドリ)に関するレクチャーと、踊りの体験。鹿踊りは、元々は山の神様に十分な食糧が得られるよう祈りを捧げるためのもので、シシは食肉を指し、関東や東北地方では熊や鹿やカモシカのこともシシと称されるそうです。見よう見まねで体験した踊りはとても難しく、その土地固有の身体性や精神のあり方に気づかされました。

続いて高橋さんの「言葉で体験を表現する」ワークショップ。例えば海外の方にお祭りを説明する時、高橋さんはできるだけ限定的な言葉や説明は避け、これまでの体験や習慣と比較できるよう具体的に問いかけ、自分ごととして経験することを促しているそうです。知識や情報をこちらから説明するだけではなく、それぞれの言葉で体験を表現し、感覚的に理解してもらうことが、深い満足につながるのだと気づきました。

地域で文化芸術に携わる方々が集まりました

鹿踊りの頭に興味津々

みんなで「四つ拍子おどり」に挑戦

国が考える文化政策の方向性、地域における芸能の担い手、海外から見た日本という3つの異なる視座から、自分たちの地域にある伝統行事や郷土芸能(民族芸能)の未来について考えるきっかけとなりました。また、実際に踊ってみることで、芸能が地域でどのように伝えられて来たかを体感し、習慣や風土に合った地域固有の身体性があることも発見できました。まずは、そこで暮らす私たちが地域の伝統とどう向き合っていくのかを考え、暮らしの中で実践していきたいと感じました。

本シリーズは2018年度も開催いたします(9月までの予定を公開中)。ぜひご参加ください!

文化芸術交流実験室 

テキスト:木下志穂