レポート「岡山カルチャー・クロニクルシリーズ1 『遊図に学ぶ視覚的な記録法』」

レポート「岡山カルチャー・クロニクルシリーズ1 『遊図に学ぶ視覚的な記録法』」

日 時2021年3月14日(日)13:00~17:00
開催地天神山文化プラザ
講 師能勢伊勢雄(写真家、美術展企画、ライブハウス主宰)、大森誠一(NPO法人アートファーム代表理事、プロデューサー)、岡田智美(山陽新聞社編集局文化部副部長 デスク)
概 要https://o-bunren.jp/labo30/

カルチャー・クロニクルシリーズ初回として注目を集めた今回の実験室。会場となった天神山文化プラザには、20数名の参加者が集まりました。

まずは能勢さんから、自身が長年取り組んできた芸術活動、コンセプチュアルアート「遊図」の理念やルーツについての解説がありました。遊図とはジャンルや時代を自由に横断し、多様な概念を結びつけて編纂したチャート(概念の地図)のこと。ここでは編集者・松岡正剛氏の著書「遊学の話」や、ドイツの美術史家アビ・ヴァールブルグの図像パネル「ムネモシュネ」の活用など、創作の原点となった書籍や貴重な資料をスライドで紹介。遊図のコンセプトや表現方法を知るとともに、能勢さんの博識と深い物の捉え方、独自の世界観についても触れることができました。

次に大森さんと岡田さんから、岡山の文化芸術の流れについて紹介がありました。大森さんは「アートファーム」の事業を通じて、地元で鑑賞する機会が少なかったパフォーミングアーツや著名な演劇公演を数多く招致しています。地域で舞台芸術の振興と普及に取り組んできた経緯とともに、演劇カルチャーの歴史や岡山における舞台芸術活動の動きを振り返りました。

岡田さんは、岡山で起こった現代アートの動きについて年表を元に解説。戦後の出来事として、天満屋岡山店で開催された「第1回日展岡山展(1948)」を取り上げました。岡山の文化芸術が発展した背景には、多分野の人が集った芸能懇話会のように民間の文化人の存在が大きかったと話します。さらに1993年から約2年間運営されたアートスペース「自由工場」をポイントとして挙げ、1990年代の若い世代を中心とした自由な芸術活動が、2000年代以降のアートシーンの活発な動きにつながったのでは、と指摘しました。

後半は能勢さんのレクチャーを元に、参加者全員で遊図の記録法を実践しました。各自で持参した1冊の新書を用いて、その中から遊図の情報となる言葉を拾い出します。まずは目次を読んで本の内容をイメージし、最終章から前へと逆向きに読み進めます。気になる言葉をマーキングして紙に書き写したら自分のテーマでグループに分けていきます。参加者は言葉の構図から自分の意識を広げる体験ができ、遊図へのファースト・ステップを学ぶ貴重な機会となりました。

まずは能勢さんが遊図の理念やルーツについて解説

貴重な資料をスライドで紹介する能勢さん

大森さんが岡山における舞台芸術活動を紹介

岡田さんは岡山の現代アートの動きを解説

「EXCAFE」のコーヒーでブレイク

後半は遊図の記述法をワークショップで体験

本の中から気になる言葉をマーキングする

マーキングした言葉を紙に書き出し、グループに分ける

※今回は、新型コロナウイルス感染症の拡大防止対策をした上で開催いたしました。

 

文化芸術交流実験室 

テキスト:溝口仁美