レポート「建築探偵団 其の参『土との対話』」

レポート「建築探偵団 其の参『土との対話』」

日 時2019年7月28日(日)11:00〜16:00
開催地パーマカルチャーセンター上籾(久米郡久米南町上籾863)
講 師カイル・ホルツヒューター(一級左官技能士、生物資源科学博士)
協 力石田尚昭(建築家、岡山市スポーツ・文化振興財団 常務理事)
概 要https://o-bunren.jp/labo20/

「会館」「団地」と建築をテーマにしてきた探偵団シリーズ第三弾は「土との対話」。久米南町の山奥で2017年から活動するパーマカルチャーセンター上籾を訪ねました。作業がしやすいよう、真夏ながら長袖・長靴・帽子・手ぬぐいをまとった参加者が集まりました。

まずはカイルさんの案内で、パーマカルチャーとは何なのか。敷地の一帯を歩き、レクチャーとガイドをいただきながら理解を深めます。パーマカルチャーはパーマネント(永続性)と農業(アグリカルチャー)、文化(カルチャー)を組み合わせた造語で、単に有機栽培などを行うということではなく、自然のシステムを生かし、人間が生活するために必要な衣・食・住・エネルギー・経済・コミュニティなど一連の要素をつなげるデザイン手法だとのことです。日本の里山に残されている伝統的な生活の知恵や技術の中にも、これに通じるものが多くあります。

例えばゾーニング(区域計画)。生活の中心となる母屋に近いエリアによく使うものを配置したり、こまめに収穫する野菜を育てたりします。セクター(区分計画)は、太陽光・風・水などエネルギーや物質をどのように敷地に取り入れて利用するかという観点。ため池の北側には、水面に反射した太陽の光が当たるため、特に光を必要とする植物を配置します。熱を蓄え日が沈んでからも周囲を温めてくれる石垣もうまく利用します。トイレはコンポスト式。おが屑を撒いて匂わなくした状態のものをためて、微生物の力で1年かけて堆肥にします。使用する果樹の近くに配置。おが屑は、製材所に頼んで分けてもらっているそうです。

ひと通り勉強した後は、午後のワークショップに備えて手作りピザで腹ごしらえ。用意いただいた生地を各自で伸ばし、トッピングしたものを窯で焼きます。ピザを焼いた後の窯も、温度が下がってからパンを焼き、その次は芋、最後にドライフラワーなどと、熱エネルギーを有効に使えることを教わりました。

午後は2つのグループに分かれて、「屋上緑化の軽量土づくり」「塗壁の荒壁づくり」を順番に体験。汗を流しながら、籾殻・堆肥・藁・土といった材料を建物の一部として使用する術やメリットを学びました。安く買えるようになった建材などを使えば、時間的には早くできるところにあえて時間と手間をかける作業。自分たちが生活する環境の持続可能性について考える時間となりました。

久米南町の「パーマカルチャーセンター上籾」が今回の会場

コンポストトイレの仕組みを説明するカイルさん

手づくりピザでランチ

屋上緑化の軽量土づくり

塗壁の荒壁づくり

 

文化芸術交流実験室 

テキスト:橋本誠(ノマドプロダクション)