日 時:2020年1月26日(日)11:00〜16:00
開催地:いかしの舎(都窪郡早島町早島1466)
講 師:嘉納礼奈(芸術人類学研究者、アーツ千代田3331 社会包摂型芸術支援事業チーフ)、木ノ戸昌幸(NPO法人SWING代表)、中野厚志(ぬかつくるとこ 代表)
概 要:https://o-bunren.jp/labo25/
今回の会場は、明治時代の町屋建築をリノベーションした施設「いかしの舎」。県内外から訪れた約30名の参加者が、和の風情あふれる空間で講師陣のトークに耳を傾けました。
まずは「ぬかつくるとこ」の中野さんが、マイペースな「ぬか」の活動の記録を紹介しました。アトリエに通う約20 ~30 名の「ぬかびと」さんは、好きなものや出来ることも人それぞれ。例えば、刺繍の好きなチカさんによる刺繍のワークショップや、新聞ちぎりのプロ・コイケさんと一緒に新聞をちぎる「コイケのオイケ」、本好きの戸田さんが紡いだ味のある言葉をおみくじにしたショップ「とだのま」など、実に個性豊か。ネーミングや企画も秀逸なものばかりで、参加者も興味深く聞き入っていました。日々の営みの中にある些細な事にスポットを当て、スタッフが自由に、時には面白がりながらアイデアを形に。中野さんは「日常そのものが『ぬか』の表現。いろいろな人がイキイキと活動し、日々ドラマと感動が生まれています」と語りました。
ランチの後は、「SWING」の木ノ戸さんが、ユニークな表現活動を紹介。木ノ戸さんは、市民が自発的に社会活動を行うNPO 法人の取り組み方にこだわり、誰もが自分らしくいられる創作環境や働き方を提案しています。紙の箱を折るという地味な作業に価値を見出すべく、名作映画のオマージュとして映像化した「shiki OLIOLI」、青レンジャーとなって清掃活動を行う「ゴミコロリ」など、どれも面白可笑しく型破りな発想。真面目にふざける「ギリギリアウト」の表現を狙いつつ、障害やアートに対する既成概念の殻を破り、楽しく継続できる活動を実践しています。木ノ戸さんのトークも笑いの小ネタが満載。会場は終始笑い声に包まれていました。
嘉納さんは、「ポコラート」の活動で印象的だった作家のエピソードを交え、美術業界側からの視点でお話しいただきました。作家の内面が反映される作品や独自の創作法や偶然性、作家・モノ・鑑賞者のどこに視点を置くかなど、型にはまらないアートを分類化。置物、ご神体、玩具など多様な役割を持つ「人形」を例に挙げて、時代や人との関わりによって意味や捉え方の変わるモノの複雑性、表現の多様性を解説していただきました。後半は「アールブリュット」「アウトサイダーアート」といった既存のカテゴライズにとらわれずに、新たなアート活動の名前を考えるワークショップも行いました。
最後は3名でトークディスカッション。表現という言葉の捉え方や活動についての想い、今回のテーマで感じたことなどを話し合いました。
町家をリノベーションしたいかしの舎の2階
ランチはぬかつくるとこの「マンチャンカレー」
アート活動の名前を考えるワークショップ
テキスト:溝口仁美