レポート「ことばから紐解く歌の世界」

レポート「ことばから紐解く歌の世界」

日 時2019年10月20日(日)11:00〜16:00
開催地岡山県天神山文化プラザ(岡山市北区天神町8-54)
講 師遊興亭福し満(落語家)、太田三郎(アーティスト)
概 要https://o-bunren.jp/labo22/

今回の会場は、天神山文化プラザの地下練習室。音響・カラオケ機器がセットされた会場に、太田さんと和装の福し満さんが現れ、不思議な雰囲気の中で22 回目の実験室がスタートしました。

まずはお2 人のトーク。午後に行うカラオケを使ったワークショップは、25 年前に世田谷美術館で教育普及を担当していた福し満さんの依頼により、太田さんがはじめて行ったワークショップが元になっているそうです。 それまで同様の経験が無く、作品制作とは直結しない、話すことに苦手意識があったという太田さん。企画者として第一人者であった福し満さんと相談を重ねていくうちに、うまく喋ることができなくても成立する内容、また歌をテーマにした展覧会にからめての提案となったそうです。

当時はカラオケをすることは、最後まで秘密にしていたこともあり、意外性もあって大盛り上がり。参加者とは、今でもことあるごとにカラオケに行くなどの交流が続いているそうです。 福し満さんは、「歌を歌うというのは原始的な行為、声だけでなく選曲でも自分をさらけ出すことになり、人の本質が出る」とその奥深さを語ります。

太田さんは、ワークショプで取り上げる歌謡曲の歌詞について、具体的に紹介をしていきます。歌謡曲を主な対象としているのは、身近なことが歌われているから。例えば作品に使っている郵便切手や手紙がどのように歌われているか。松任谷由実「まちぶせ」にはラブレターが、島津豊「ホテル」では不倫の一幕として「手紙を書いたら叱られる」という歌詞が出てくるなど。また太田裕美「木綿のハンカチーフ」に歌われている田舎と都会の価値観を逆にした替え歌「続・木綿のハンカチーフ」を考えてみるとどのように聞こえるか、など。福し満さんは、「まちぶせ」はよく聞いていると「ストーカーみたいな怖さのある歌詞。右から左にながれている歌詞を眺めていると、歌の色んな側面が見えてくる。」、また歌われがちな価値観についても「男と女で捉え方が違うものなど、つっこみどころが多いものがある。」と指摘。 会場の参加者は歌詞が出る度に「なるほど。」「わかる!」と活気づきました。

ランチの後はいよいよ、参加者へも事前に問いかけがあった歌謡曲の歌詞について発表とカラオケの時間です。さだまさし「関白宣言」の内容には時代錯誤な違和感があり、実際に「関白失脚」という別バージョンがあること。ピンクレディー「UFO」でなぜ宇宙人との恋愛が歌われたのか。中島みゆき「空と君のあいだに」で騙されるのは女、騙すのは男とあるが逆の方が多い気がしてリアリティがないなど。多様な意見とともに、講師、参加者入り乱れて熱唱の時間となりました。

太田さん(左)、和装で登場した福し満さん

EXCAFEさんのランチボックスとスープ

中島みゆきを熱唱する太田さん

詞に注目しながらカラオケを楽しみました

 

文化芸術交流実験室 

テキスト:橋本誠(ノマドプロダクション)