Youtube配信 ⑨ わたしたちのつなぎかた 〜勝山・千代萬歳豊稔踊のいま〜
第9弾の訪問実験室は、岡山県真庭市勝山に伝わる盆踊り「千代萬歳豊稔踊(ちよまんさいほうねんおどり)」を継承し、伝統を守りながらも、新たな試みで祭りを継続させている取り組みを紹介します。
今回は「勝山もちより盆踊り」として2025年8月14日に行われた盆踊りの準備期間から、本番当日までの様子に密着。さらに、祭りの運営を行う「勝山踊りましょう会」の代表を務める音楽家・江南泰佐さんを中心に、盆踊りの保存や運営、支援に関わる6名の方々にお話を伺いました。
インタビューでは、千代萬歳豊稔踊についての思い出や魅力、一度は途絶えてしまった祭りの継承、復活に向けた取り組みなどについて語っていただきました。盆踊りをつなぐ人達のさまざまな声を交えながら、新たな形へと変わった千代萬歳豊稔踊の3年間を、共に振り返ります。
このレポートと合わせて、ぜひ本編のYouTube動画をお楽しみください。
形 式 / YouTube配信(岡山県文化連盟 公式チャンネル「おかやまカルチャー・ヴィ」にて配信中)
対象者 / 地域文化、祭り、芸能
収録レポート

世代を超えて受け継がれる、勝山の盆踊り
岡山県真庭市勝山には、「千代萬歳豊稔踊(ちよまんさいほうねんおどり)」と呼ばれる伝統的な盆踊りの文化があります。江戸時代から続く歴史があり、七五調の歌詞と太鼓、尺八、三味線の生演奏で踊るのが特長。夏の勝山を彩る風物詩として親しまれてきました。
しかし、近年は少子高齢化による担い手の減少やコロナ禍、天候不順などの影響が重なり、夏の盆踊りは中断を余儀なくされます。踊り手や演奏者も高齢化し、世代交代の時期が訪れていました。

音楽家の江南さんが真庭に移住した2020年は、ちょうどコロナ禍で夏祭りが中止になり、盆踊りを披露する機会を失っていた時期。江南さんは、近所に住む田中さんから尺八を習い始めたのをきっかけに千代萬歳豊稔踊のことを知り、勝山の文化に触れていったそうです。
盆踊り特有の音色、踊り、歌詞に紡がれる言葉は、その土地と切り離せないものであり、その深い魅力に気づかされた、と江南さんは語ります。


動画本編では、江南さんの尺八の師匠「勝山千代萬歳豊稔踊保存会」の田中さん、同会長の初本さんにもインタビューを行い、盆踊りの歴史や思い出を振り返っていただきました。
次第に盆踊り再開への機運が高まり、2023年には新たな盆踊りの在り方を探るための運営組織「勝山踊りましょう会」が発足されました。江南さんも運営に加わり、地域の若手世代を中心とした盆踊りがスタートします。

2023年からは、新たに「勝山もちより盆踊り」という名前で夏祭りが復活。インタビューでは、盆踊りの会場となった真庭市立中央図書館の館長、西川さんにもお話を伺いました。社会教育や地域活動をサポートする役割を持った図書館が、地域のお祭り、という文化を楽しむ拠点となりました。
動画本編では、住民や参加者とみんなで場を作っていくという「持ち寄り」のコンセプトについても触れました。また、住民参加のチラシ作りや「まにわ図書館ラジオ」での話題共有、オンラインでの参加者募集など、参加者を広げるための取り組みについても紹介しています。

祭りの一カ月前には、一般の方に向けた踊りの練習会が開かれました。練習会は保存会の協力のもと、「勝山踊りましょう会」も参加し、踊りの継承に努めています。
「勝山もちより盆踊り」は、新たな試みや協力体制によって参加者の輪を広げてきました。それ以上に、「日々の挨拶やコミュニケーションを大切にすることで、結果的に人が集まってくれた」と話す江南さん。祭りをつくることが、普段からの地域とのつながりを育むきっかけにもなっています。
インタビューでは、「勝山踊りましょう会」のメンバー辻さん、森さんにも協力していただき、若手世代が感じる盆踊りの魅力や、集客の取り組みなどをお聞きしました。


いよいよ、復活から3年目を迎えた2025年の「勝山もちより盆踊り」が開幕。盆踊りの前には地域有志による余興や屋台が人気を集め、その数も年々増えているそう。日暮れとともに尺八や三味線の音色が響いてくると、祭りの賑わいもピークを迎えます。
この年は踊りの輪が2列になるほど、大勢のお客さんが盆踊りに参加しました。千代萬歳豊稔踊と合わせて、勝山町にはなじみ深い「勝山観光音頭」も華を添えます。ゆったりとした優雅な振り付けで、大人も子どもも一体になって踊ることができます。参加者は心ひとつに踊りを楽しみました。

伝統を守りながらも、新しい形で継続している「勝山もちより盆踊り」。住民が主役となった手づくり感あふれる夏祭りは、参加者からも好評を得ています。
動画の最後では、運営3年目を迎えて想うこと、これからの新たな千代萬歳豊稔踊の在り方について振り返っていただきました。
盆踊りやお盆のお祭りには、ご先祖様の霊を迎えて賑やかに送りだす、という先祖供養の意味合いが込められています。それと同時に、地域の絆を深める上でも大切な行事の一つ。華やかさと哀愁あふれる夏祭りの風景とともに、街の歴史や物語のバトンを受け継ぐこと、文化の保存がもたらす地域への愛着や絆についても、想い馳せてみてください。
勝山千代萬歳豊稔踊(かつやまちよまんざいほうねんおどり)
1764年(明和元年)、三河国から国替えになった初代勝山藩主・三浦明次の家臣が作曲・振付した江戸時代から続く、勝山の伝統的な盆踊り。 もともと藩士が護国豊穣を祈り舞っていたが、いつの頃からか民衆も一緒になって、自由に踊るようになったといわれる。七五調の歌詞と太鼓・尺八・三味線の生演奏で踊るのが特徴。1986年(昭和61年)、勝山町重要無形民俗文化財(現真庭市)に指定された。
勝山千代萬歳豊稔踊保存会
江戸時代から260年もの間踊り継がれる真庭市勝山地域の盆踊り「勝山千代萬歳豊稔踊」(真庭市重要無形民俗文化財)の普及、伝承を目的として、1979年(昭和54年)に有志により発足した。
勝山踊りましょう会
勝山千代萬歳豊稔踊をはじめ、踊りを披露するお盆の夏祭りは勝山地域の楽しみのひとつ。ここ数年は存続が危ぶまれつつも、伝統を守りながら新たな試みで継続の道をさぐっており、2023年(令和5年)からは「勝山もちより盆踊り」の名称で実施している。その運営を担うのが、住民有志で結成された勝山踊りましょう会。
聞き手
皿井淳介、金孝妍、高田佳奈
映像編集
皿井淳介
収録レポートテキスト
溝口仁美

