日 時:2018年11月16日(金)19:00〜21:00
開催地:東山ビル(玉野市宇野1-7-3)
講 師:金廣有希子(公益財団法人 福武財団 アーカイブ・セクション リーダー)、多田智美(編集者、株式会社MUESUM 代表)、橋本誠(アートプロデューサー、一般社団法人ノマドプロダクション 代表理事)
概 要:https://o-bunren.jp/post-2478/
2017年から開催してきた文化芸術交流実験室。第15回の様子をレポートでお届けします。
今回の会場は、直島や小豆島へ向かうフェリーが行き交う宇野港のすぐそばに佇む東山ビル。古い雑居ビルを改装した空間に、県内外からアートプロジェクトに興味をもつ約30名が集まりました。
まずは橋本さんが、「記録」と「アーカイブ」に求められることについて提示。文化芸術活動において記録は、客観性を保ちつつ、その場でしか鑑賞・体験できない状況や価値、かたちにならない表現やエピソードを残すことがポイント。また、アーカイブは、記録が整理され使える状態になっていること、それらが編集され、価値が人に伝わるよう活用されることがポイント。つまり、記録とアーカイブの意義は、文化芸術の価値を社会に還元し、公共財化することであるとまとめました。また、データの保管方法やアーカイブの汎用性を高めるために公開されている様々なツールやキットも紹介しました。
続いて、金廣さんよりベネッセアートサイト直島のアーカイブ事業の紹介。長年様々な事業を手がけてきた一方、作品の制作プロセスや、地域の方々・来場者とのエピソードなどに関わる記録・資料が散在し、どのようなものが存在しているのか、全容が把握できない状態だったそうです。そこで、海外の芸術祭や国内のアーカイブ関連団体などの取り組みを学びながら、過去30年分の資料整理に着手。目録を作り、アナログ資料のデジタル化も進めています。それらは広報や研修、修復など様々な場面で活用されているそうで、アーカイブが事業を継続するエンジンとなり得るとの所感が共有されました。
最後に、多田さんからアーカイブを活用する編集者の視点で話を伺いました。様々な人々が関わるプロジェクトに携わる中で、プロジェクトのアーカイブからさらに新しいプロジェクトが生まれていく循環を意識し、「今はもちろん、未来に仲間を見つける視点で紡ぐこと」を大事にしているといいます。また、既にある文献・資料と出会うきっかけづくりとしての視点、100年、1000年といった長いスパンで活用されることを見越すのであればあえてそのまま残す視点も時には必要であり、「編む」と「ほぐす」の両方の技術がますます重要になるのではないか、という指摘に、腑に落ちた表情の参加者が多くいました。
翌日は希望者と共に金廣さんの案内で直島を訪問。トークで話題となった作品などを見た後に、アーカイブ資料が整理・保存されている非公開スペースの様子や、作品に関する住民の方へのインタビュー映像資料なども見せていただきました。この体験からの気づきや、記録・アーカイブの意義や活用方法について、皆で共有したり、ディスカッションする有意義な時間を過ごしました。
夜の東山ビルはムーディーな雰囲気
講師の3人。互いに驚きや発見で笑顔がこぼれます
アーカイブ見学会での意見交換
テキスト:木下志穂