備前国 溶け合う異文化

備前国 溶け合う異文化

備前国 溶け合う異文化

私たちは暮らしている中で、なぜ此処に異国の人々がやってきたのだろう…と、不思議に思う場所や事柄に出会うことがあります。

異国の人々が伝えた、これまで見たことがなかった文化や技術が、とても自然に地域に根付き、今では、なくてはならないものとして馴染んでいたりします。地球規模で見てみると、文化はどこか地続きで、微妙なグラデーションで緩やかにつながっているようですが、やはり遠く離れた国からやってくるものには、互いを出会わせる何らかの理由があるはずです。県内を見回すと、備前というエリアにはそういった、日本の文化と溶け合って存在する異文化があちこちに見つかります。

昨今では、軽々と国境を超えてやって来て、日本の伝統的な技術や文化を、自分たちの暮らしや仕事の軸足にしている若い人々も沢山います。そんな彼らから、私たちは日本の伝統的な文化芸術の良さに改めて気づかせてもらうことも増えてきたように思います。彼らはなぜ、ここ岡山を選んだのでしょうか。

中国山地では長きにわたり砂鉄の採取や、たたら製鉄のための木材の伐採が続いたため、大量の土砂が川に流され下流に堆積しました。1500年後半にはその土砂の堆積で児島半島と本土の間にある「吉備の穴海」に干潟が形成されました。オランダはライデン生まれのアントニー・トーマス・ルベルタス・ローウェンホルスト・ムルデルは、デルフト工科大学を卒業後、ハーグ市で土木の設計技師として働いていましたが、31歳の時に日本の内務省の土木技師として来日します。2年後の1881年には、岡山で綿密な調査を行い「児島湾干拓計画図」を作成しました。彼は調査の中で、山々の樹木の伐採を続けることによって土砂の流出が止まらず、洪水を引き起こすことを憂慮し、伐採の禁止や川の上流における砂防の必要性なども提言しています。異国からやって来た30代の若者が果たした役割はとてつもなく大きく、すでに140年も前に、彼は環境保護や治水の方向性を示していたと言えます。

臨済宗妙心寺派の禅寺、曹源寺は、岡山藩池田家の菩提寺ですが、ここには世界各地から修行者がやって来ます。20人あまりの修行者のほとんどが外国の人であるお寺は、日本国内でもとても珍しいのではないでしょうか。ここでは美術作品の展示も行われることがありますので、それをご覧になりに訪れた方も多いでしょう。

そして、日生にはBIZEN中南米美術館があります。魚網を製造し海外にも広く販売していた森下グループの初代社長森下精一氏がコレクションしたインカ文明やマヤ文明の土器や土偶、布などが展示してあり、国内外より研究者が訪れる貴重な場となっています。
また、よく知られているものに、牛窓の朝鮮通信使があります。1600~1800年代に、出発地点の朝鮮の漢陽(現在のソウル)よりやって来た使節団一行は、時に数百人にもおよびました。様々な技芸に秀でた者も多く含まれていたといいます。県の重要無形民俗文化財である唐子踊は、この一行の中で人々のお世話をしながら旅の慰めとして歌や踊りを披露した、才能あふれる子どもたちの服装や踊りに影響を受けたのだと言われています。

今年のおかやま県民文化祭「これがOKAYAMA!プログラム」では、備前国〜溶け合う異文化〜をテーマに取り上げます。

穏やかな内海の航路と良港の存在、豊かな自然、山から海へと注ぐ水量豊かな川、古くから人の往来が多かったこと、暮らしやすい気候などが、備前国へと人々を惹きつけて来たのかもしれませんが、さらに、これをきっかけに、身近に暮らす異国からの人々の話に耳を傾け、一緒に何かをしてみるのも良いのではないでしょうか?彼らを誘ったものは一体何なのか…。溶け合う異文化という視点で地域をあらためて見つめ直すと、これまで気づかなかった備前というエリアの持つ地域性や、文化の特性、魅力などが、じわりと浮かび上がってきそうです。ここで取り上げるのは、異文化とつながりの深いヒト・場所・コトです。どうぞ、この冊子を手掛かりに各地を訪ねてみてください。

リーフレット

リーフレット(PDF) クイズの応募はこちら(12/8まで)

 

 

編集・発行

おかやま県民文化祭実行委員会(公益社団法人岡山県文化連盟、岡山県)

協力

本リーフレット作成にあたり、ご協力いただきました関係各位に心より御礼申し上げます。

デザイン

株式会社 LogooDesign

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