Youtube配信 ⑧ The民藝 ~伝統を受け継ぐい草のいかごづくり~
訪問実験室シリーズの第8弾は、岡山県倉敷市でい草を使った生活雑貨「いかご(い草の籠)」の製作を行う「須浪亨商店 倉敷いかご」の工房を訪ねました。
お話を伺ったのは、須浪亨商店5代目の須浪隆貴さん。花ござを生業とする家に生まれ、いかごの伝統的な技法を祖母から受け継いでいます。自ら編み出した綯(な)い方も取り入れながら、い草職人として多彩ない草製品を生み出しています。
今回は昔ながらの機織り機を使い、手作業で編むいかご作りの製作工程を見学しました。さらに、民藝品や工芸品に魅せられた須浪さんの貴重な蒐集品(しゅうしゅうひん)も拝見。インタビューでは職人になるまでの経緯や、伝統のものづくりに対する考え方、い草・いかごの魅力についてたっぷりとお聞きしました。
このメイキングレポートと合わせて、ぜひ本編のYouTube動画をお楽しみください。
形 式 / YouTube配信(岡山県文化連盟 公式チャンネル「おかやまカルチャー・ヴィ」にて配信中)
対象者 / 伝統文化、民藝、工芸
収録レポート

い草の産地で生まれた、日常のものづくり
今回訪れた工房があるのは、のどかな田園風景が広がる岡山県倉敷市の郊外。この地域は、江戸時代からい草の栽培が盛んな一大産地であり、昔は工房の前にい草の畑が広がっていたそうです。かつては花ござ作りをメインにしていた須浪亨商店ですが、須浪隆貴さんの代になった現在では、花ござの副産物として作られていた「いかご(い草の籠)の製作に取り組んでいます。
前半のインタビューでは、産地に根付いていたい草の文化や須浪亨商店の歴史、いかご作りについて語っていただきました。
現在、岡山県内でいかごを作っているのは須浪亨商店だけ。手仕事で一つひとつ作られるいかごは、日本のみならず海外でも人気を集めています。
明治時代に建てられたという作業小屋の中では、須浪さんが年代物の織り機でいかごの本体となる生地織りの作業に励んでいました。まずは、織り機を使った製作工程を拝見することに。

ここでは縄状に加工したい草の束を巻き取って選別し、1本ずつ織り機にセットして必要なサイズに織っていきます。岡山県内ではすでにい草が生産されなくなっているため、材料は九州産のい草を使用しています。トントントン、と機械がリズミカルに動きだすと、部屋じゅうにい草の爽やかな香りが広がりました。

縄の状態に応じて結び直しなどの細かな調整を行い、青々としたい草を1枚の生地に織っていく須浪さん。子どもの頃から手伝っているだけに、素材の見極めや機械の扱いも手慣れたもの。日常生活の一部として営まれてきた、貴重な手仕事ぶりを見ることができました。いかご作りを教えてくれたおばあさまは、今も現役で作業を手伝っているそうです。
部屋が仄暗いのは、直射光によりい草が変色するのを防ぐため。灯りが必要な時は、須浪さんの「アレクサ、電気付けて!」の声とともにライトが点灯(※)。昔ながらの空間がスマート化されているギャップが面白く、撮影チームみんなが思わず笑ってしまうという一幕も。
※Amazonのスマートスピーカーにより、発声による操作ができる仕組み

敷地内にはいくつかの作業場や倉庫、自宅の建物があり、あちこちに古道具や工芸品、生活道具などが無造作に置かれていました。ものづくりの場と日常の暮らしぶり、その混ざり合ったリアルな風景に魅せられます。

次に別の作業場へ移動し、織り機で織ったパーツや持ち手を編んで組み立てる工程を見学。いかごを編む作業はご家族やスタッフさんと分業しているそうで、その他にも瓶を入れる瓶かごや鍋敷き、縄のれんなども製作しています。今回は、瓶かご作りも実演していただきました。


作業場には、工芸品と並んで大好きなアニメのグッズやポップなデザインの雑貨が所狭しとディスプレイされていました。狙っていないのに不思議と絵になる空間です。
産地ならではの伝統技術に光を当て、定番を守りながらも新しい工夫やアイデアを取り入れている須浪さん。その柔軟な感性とバランス感覚の良さは、仕事の現場や日々生み出される商品にしっかりと現れているようです。

須浪さんは民藝品の蒐集家としての顔を持っています。後半では、ズラリと並ぶ民藝コレクションを眺めながら、いかご作りを本職にするまでの道のりや、製作のこだわりについて語っていただきました。大好きな民藝についても話題を広げながら、作り手としての価値観やスタンス、いかごや伝統工芸のこれからについてもお聞きすることができました。
地域風土のものであり、生活に用途があって、今のライフスタイルの中でも愛着を持てる。そんな素敵なものづくりに誠実に向き合い、作り続けることで価値を生み出している須浪さん。いかごの魅力とともに、須浪さんのチャーミングな人柄や真摯な姿勢も伝わる映像となっています。
講師紹介
須浪亨(すなみとおる)商店 須浪隆貴さん
1993年岡山県倉敷市生まれ。倉敷市にて畳表や花ござの製造をしていた1886(明治19)年創業の「須浪亨商店」の5代目。20歳よりい草で編んだ籠(かご)や鍋敷き、瓶かご、縄のれんなどを製作している。岡山県民藝協会副会長。
TEL. 090-5268-1509
https://maruhyaku-design.com/
聞き手
高田佳奈
映像編集
皿井淳介
収録レポートテキスト
溝口仁美

