レポート「社会とアート ~ひきうける美術〜」

レポート「社会とアート ~ひきうける美術〜」

日 時2019年11月23日(土)11:00〜16:00
開催地衆楽園 迎賓館(津山市山北628)
講 師太田三郎(アーティスト)、宮本武典(キュレーター)
概 要https://o-bunren.jp/labo23/

今回の会場は、紅葉が美しい津山の廻遊式庭園・衆楽園。庭園を望むことのできる迎賓館には、太田さんの作品も展示され、参加者を迎えました。

まずは宮本さんからのプレゼンテーション。共同体の痛みから生み出される作品、その痛みを「ひきうける」という今回のテーマは、東日本大震災の後から意識するようになったそうです。山形から宮城・石巻へ1年半ほど瓦礫撤去の活動で通っていたことなどから、震災を受けて活動しようとする様々なアーティストからも連絡を受け、泥水に浸かったピアノを作品として再生することで、亡くなった方に向き合う向山朋子さんのプロジェクトなどをキュレーションしたそうです。

山形出身の絵本作家・荒井良二さんとは、3.11を語りつぐ絵本『東北未来絵本』を震災1周年を機に制作されました。プロの表現ではなく、「(物資が手に入らず)ホットケーキばかり食べていた」など、様々な市民が自分たちの言葉でリアルに当時の様子をつづったそうです。他にも、ミロコマチコさん(絵本作家)、和合亮一さん(詩人)、川村亘平斎さん(ガムラン奏者/影絵師)らと被災した人々が共同制作したプロジェクトを紹介。「つながりをつくるもの、いろんな人が参加できるものが、3.11当時は欠かせなかった。」と宮本さんはしめました。

ランチの後は、太田さんのプレゼンテーション。太平洋戦争で行方不明になった兵士の像、中国残留日本人孤児、広島の被爆した地蔵などを形にした《Post War》シリーズ、生命や種子の関係に着目した《Seed project》など、切手や手紙の形式で作品の制作を続けています。《Post War》は発表後反応が大きく、戦争についての様々な思いをつなぐものとしての作品が「求められている」と感じることがあったそうです。

当日展示された太田さんの作品《石の小箱》の話にも。切手状の紙片には、虐待により亡くなった子供の名前と死亡時の年齢・年号が記されていて、箱の中には小さな石を納めています。太田さん曰く、石はお骨をイメージしていて、年齢に応じて大きさを選んだりしているそうです。

ワークショップでは、参加者がそれぞれにもつストーリーに基づいた形を掌サイズで制作。祖母の介護に使っていた鈴、母がいつもつくってくれていたオニギリなど、出来あがった形を観察し合いながら、言葉でもその内容を共有しました。

痛みを「引き受ける」作品について話す宮本さん

太田さんの作品《石の小箱》

NishiIma25のランチボックスと五大北天まんじゅう

掌編集をつくる。ワークショップ

車座になり、制作した形に関わるストーリーを言葉で共有

会場となった衆楽園(旧津山藩別邸庭園)

 

文化芸術交流実験室 

テキスト:橋本誠(ノマドプロダクション)