トークセッションとワークショップがセットとなった新しい切り口のシリーズ企画

レポート「アーティストが作った料理 作家が作った料理」

レポート「アーティストが作った料理 作家が作った料理」

日 時2018年12月1日(土)15:00〜19:00 
開催地クレド岡山(岡山市北区中山下1-8-45)
講 師杉本克敬(バリスタ、ネイバー・キッチン主宰、EXCAFE 代表)、新藤信(日本パウル・クレー協会 代表)
概 要http://o-bunren.jp/post-2484/

2017年から開催してきた文化芸術交流実験室。第16回の様子をレポートでお届けします。

会場は、岡山市の中心部にあるショッピングビル、クレド岡山。エスカレーターすぐ横の買い物客が行き交うオープンカフェがいつもと違う空間になり、なにやら美味しそうな料理が並んでいます。文学や料理に興味があるという幅広い年代の方々が集まりました。

まずは杉本さんから、ネイバー・キッチンの活動について紹介がありました。クレド岡山の近くでカフェを営む杉本さんは、バリスタとしての技術や調理の経験を活かして、2年ほど前から大人も子どもも同じ空間で料理を作り、それを食べる場作りに取り組んでいます。その思いの底にあるのは、「料理には失敗はない」ということ。決まったレシピや何かの料理をめざして作ると、出来不出来に差が出てしまいます。でも、本来料理のゴールはひとつではなくて、みんながそれぞれの完成をめざすものであると杉本さんは言います。今日は、食そのものに文化や芸術を感じ、みんながそれぞれの完成をめざして作って食べることを楽しもう、という呼びかけに、参加者の期待も高まりました。

次に新藤さんから、パウル・クレーの人となりや暮らしぶりについて話を伺いました。長年クレーの著作に触れ、遺族と親交を結んできた新藤さんは、クレーを「緻密で真面目な性格」と表現。幼少期から40歳前後までマメにつけられた日記から、その性格や暮らしぶりを軽妙に語ってくれました。また、自身が手がけた本『クレーの食卓』で、売れない画家時代に主夫として家事や料理を担っていた料理レシピに触れ、「誰かのために作る」という点で芸術家と料理人の仕事は似ていると指摘。また、内田百閒の『御馳走帖』から「缶詰」をひき、クレーと百閒との物事を観察する視点の共通点を探ったり、バイオリンがプロの音楽家並みの腕前だったクレーにゆかりの作曲家や楽曲エピソードなど、楽しい話が尽きません。

ワークショップでは、まず杉本さんが用意をした『クレーの食卓』に登場するスープを試食し、なんの食材が、どんな風に調理されているかをグループごとに考えます。そうして決まったレシピを元に、みんなで調理。同じスープを味わったはずなのに、選ぶ食材や調理方法がグループごとに少しずつ違っていて、異なる味の3種類のスープが完成しました。会場に並べられたクレーや百閒にゆかりの料理を取り分けて、一緒に試食しながら、お互いの味の違いを比べてみたり、どうすればもっと美味しいか、普段どんな風に料理しているかなどを話したり、参加者同士で会話が弾みました。

会場は人が行き交うエスカレーターのすぐ隣

クレーと料理のエピソードを話す新藤さん

レシピを想像しながら「大麦のスープ」を制作

出来上がったスープの材料や作り方を発表

 

文化芸術交流実験室 

テキスト:木下志穂